私は男性不妊の原因の一つである精索静脈瘤であると診断され、それを改善するための手術(顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術)を受けた。
この記事では精索静脈瘤の症状や改善策について簡単にまとめると共に、私がリスクを負ってでも手術を受けることを決断した理由を紹介したいと思う。
精索静脈瘤とは?グレードは?治療方法は?リスクは?
静脈の弁が機能しなくなり、血液が逆流することによって精巣のすぐ上にできるコブ状の静脈の名前。
これができると、精巣付近に逆流した血液が溜まってしまい、精巣が温められたり、静脈血中の活性酸素によるダメージを受けたりする。
この結果、精子を作る能力が低下してしまうと考えられている。
症状の重さに応じて3つのグレード(1,2,3)に分けられ、私は一番重症のグレード3であった。
治療方法としては、根本的な治療を望むなら手術、軽く症状を抑えたいならサプリを飲むという手がある。
ただし、サプリを服用したり手術したからといって必ずしも症状が良くなるとは限らない。
また、手術によって精巣が委縮するなどのリスクもある。
リスクを負ってでも手術を決断した理由は?
これらのことを医者から告げられた時、私はすぐに手術を受ける気にはなれなかった。
「手術をしても必ずしも精液所見が改善するとは限らない」、「精巣が委縮する副作用の可能性がある」この2点が引っ掛かったからだ。
ただ、この2点については以下のように考えて乗り越えた。
1.「手術をしても必ずしも精液所見が改善するとは限らない」という点について
そうは言っても、全体として半分以上の人で症状が改善しており、症状が重い(グレードが高い)人ほど手術の後に精液所見が改善する見込みが高いらしい。
それなら、グレード3の私は手術によって症状が改善する見込みが高いのだろう(①)。
2.「精巣が委縮する副作用の可能性がある」という点について
これはかなり気になった。
精巣が委縮してしまったら、一生ホルモンを注射し続ける生活になる。
そうなってしまっては、子作りどころか、自分の人生もままならなくなるのではないかという懸念があったのだ。
この話を医者にしたところ、この副作用がみられたのは、精索静脈瘤の手術の黎明期に顕微鏡を使わず(つまり細かい作業が出来ず)、切る必要のない管までまとめて切っていた頃のことらしい。
今は顕微鏡を使って一本一本切る管を選ぶので、顕微鏡を使った低位結紮の手術ではこの副作用はほとんどないとのこと(②)。
そこまで可能性が低いなら良いか。死ぬのが怖いから外に出ない…というわけにはいかないと、自分を納得させた。
これら①②の理由に加えて、以下の事実も手術の決断を大いに後押しした。
③サプリを飲んでも効果なし。
医者の説明だと、サプリは活性酸素の悪影響を抑える効果があるらしい。
しかし、血液の逆流による精巣の温度上昇はどうにもならないので、症状の重い私には効果があるとは思えなかった。
実際、サプリを飲んでも精液所見は改善しなかった。
症状の改善に貢献しないサプリに月々1万円も払うのが段々バカバカしくなってきた。
④精索静脈瘤は放置すると悪化する可能性がある。
こうなると、ゆくゆくは男性ホルモンの製造にも支障をきたす可能性がある。
男性ホルモンの血中濃度はメンタルにも影響するので、男性の更年期障害の原因にもなるらしい。
子供ができなかった場合、私は仕事に生きようと決めていたが、これでは仕事にすら支障をきたす恐れがある。
手術で精巣が委縮する可能性と、静脈瘤を放置してホルモンの製造能力が破綻する可能性では、明らかに後者のほうが高そうだった。
⑤生き物である以上、子孫を残す努力は最大限しておくべきだと思った。
どんなに高尚な人生の意義を唱えようと、私たちは「繁殖」によって脈々と引き継がれてきた地球生物の系統の末端にいるに過ぎない。
この系統の一部として存在している以上、私も「繁殖」によって生きた痕跡を残したい。
結果はどうであれ、そのための努力は最大限しておかないと、人生に悔いが残ると思った。
⑥強引に人工授精しても流産したり子に障害が出てしまう可能性がある。
精子は子に私の遺伝情報を渡すためのカプセルだ。
この遺伝情報が刻まれたDNAが痛んでいないかどうかを検査したところ、私の精子中のDNAはズタボロだった。
この状態でも自然妊娠することはなくはないし、人工授精も可能らしいのだが、流産したり子に障害が出る可能性が高いとのこと。
私が手術をしなかったばっかりに妻に流産させて大きな負担をかけたり、子供に障害を負わせるわけにはいかない。
以上①~⑥の根拠で、私は最終的に手術を受けるという決断を下した。
手術を受けるかどうか迷っている方の参考になれば幸いだ。
また、初めての精液検査から精索静脈瘤の手術、術後の痛みや経過に至るまで具体的な体験談を書いたので、興味がある方は参考にしてほしい。
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